8 後編
五月五日の子供の日に、
ご町内の七五三世代の幼子たちが、
氏神様へ稚児舞いを奉納する例祭があり。
舞台でもある神社へと向かう道行きの補佐、
傍づき衆の役目を依頼された我らが最聖のお二人。
お務め自体は問題なくこなせたものの、
『一体、何をしてますか、梵天さん。』
『お、これは気づかれましたか?』
その渡御行列を華やかに盛り上げんとの意図からという、
天部様からの賜りもの、花吹雪が様々に見舞うわ、
浄土の風の香りそのまんまの、馥郁とした白檀の香りがするわ。
こっちは大天使さんからの祝福、
おめでたい瑞鳥の甘露な鳴き声が届くわと、
微妙に“あり得ない”奇跡がついて来たのへ。
あとで怪訝に思われたらどうするのだと、
釈迦牟尼様はこっそり胃が痛くなる想いをしたらしく。
帰宅した途端、はぁあと肩を落としてしまった伴侶様なのへ、
これはねぎらって、もとえ、
いたわって差し上げねばと
思ったのだろうイエス様のお口から飛び出したのが、
『今日はもう、飲もう。うん、そうしようっ。』
そんな斜め横な一言であったりし。
あまりの脈絡のなさに、はい?と聞き返して来たブッダだったのへ、
「だって今日は祭日だよ?」
勤勉実直な日本人だって、
お祭りの日は明るいうちからお神酒を飲むんだ。
それでなくともバカンス中の私たちなんだし、
「今日なんてお祝いごとへの加担もしたんだから」
そうと朗らかに言い放ち、
そのまま冷蔵庫へ向かう…かと思いきや。
ブッダが座り込んでた六畳間の方の、
押し入れ前へと運ぶと
ふすまを開けて膝をつき、
下段の端っこへ身を突っ込むようにして見せる。
「イエス?」
当家の整理整頓部隊長でもあるブッダが、
捜しものなら私がと身を起こしかけたそこへ、
「これこれvv」
妙に嬉しそうに引っ張り出したのが、
2リットルサイズのガラス製クーラーポット。
夏場で来客予定があるときに
沸かしおきの麦茶を多めに冷やすのへと使っているもので、
だが、今は赤い液体が入っているし、
「…それってなぁに?」
色合いからして、もしかせずとも赤ワインのようではあるのだが、
それだけじゃあなく、
カットされた何かが一緒に入っているのが見て取れる。
果実酒はホワイトリカーを使うはずだし、
第一、半月以上は浸け込むもの。
ほんの数日ほど前にも掃除したが、
その折には見なかったなぁとブッダが思い起こしておれば、
「これはね、サングリアっていう飲み物だよ?」
どうやらイエスが自分で用意したらしく。
「赤ワインへ、よく洗ったオレンジやベリー、
他にも季節の果物と、砂糖とシナモンを浸け込んで作るんだ。」
ライムやレモン、リンゴもお薦めで、バナナが案外と評判いいそうで。
ただ、オレンジ類のワタ(白い部分)や
産毛のある桃の皮、バナナの筋などは 苦みや渋さの素になるので、
出来れば入れない方がいいそうです。
*水気もよく拭って。菌が沸く源になるぞ?
(即日飲み切るなら気にしなくてもいいかも…)
ただし柑橘の皮は香りの素なので、入れた方がいい。
なので、面倒でもまずはスマイルカットにし、果肉だけを削いで入れ、
皮は皮でワタを削いで入れる手間をかければよりおいしい出来になるのだとか。
果物、シナモン、砂糖(甘くしたいなら蜂蜜)を入れた
クーラーポットや広口ビンへ、ワインを縁近くまでそそぎ、
密封して 一晩 若しくは1日漬け込めば出来上がりで、
そのまま飲んでもいいが、ソーダで割っても良しだとのこと。
浸けるときにラムを入れるというレシピもあるそうですが、
まま、そこはお好みで。
簡単に作ったソーダ割を恐る恐る味見したブッダの感想は、
「あ、そっか。ホットワインの夏 Ver.だねvv」
「う〜ん、そんな感じかな?」
完成品でも売ってはいるが、
自家製の方が甘さや風味を好みで調整出来るのでお薦めで、
安いワインでもびっくりするよなソフトドリンクに早変わりするそうで。
「じゃあ、お昼ご飯は肴になるものの方がいいね。」
たしか…と、春巻きの皮やらジャガ芋、
キヌサヤに大豆ミートの買い置きなどなどを取り出して、
早速 何やらパタパタと作り始めるブッダの邪魔にはならぬよに。
グラスを用意し、ソーダは買っておいたけど、ああ氷が要るよねと、
近所のコンビニまでひとっ走りするフットワークの軽さを見せたイエスへ。
現金だなぁなんてブッダに苦笑を誘うころには、
何でそんな唐突なことを言い出した彼なのかの“そもそも”も
すっかり薄れていたくらい。
「たっだいま〜vv」
「お帰り〜vv」
今日はすんなり脱げたスニーカーを後にして、
わしゃわしゃと にぎやかなビニール袋へ、
ついでにと買って来たらしいのがミントとライムで。
グラスの底、ミントと砂糖をマドラーでごりごり潰し、
ラム酒とソーダで割ってライムを搾った
お気に入りのモヒートを手際よく作ったイエス様。
そちらも思いつきラインナップとは思えぬ、
どれも美味しそうな肴の並ぶ卓袱台に着くと、
モヒートとサングリアで“乾杯vv”と相なるvv
「わあ、何かお酒とは思えないねvv」
イエスの転変させた赤ワインも 嫌いというのではないけれど、
いかにもな深みやちょっぴりの渋みが ちょっとヘビーかなと感じるブッダには。
文字通りフルーティな風味と化していて、しかも甘いので、
氷もそそいで、ミントも添えてという
ちゃんとした拵えのグラスからの一口目は、
おおと目許をぱちくりしちゃったほどに美味しかったようで。
「でも、だからって ジュースみたいにごくごく飲んじゃダメだよ?」
いつものソーダ割と、
アルコール度数はあんまり変わらないんだからと、
こちらは慣れのあるイエスが、
わざとらしくも やや目許を眇めてクギを刺すのも忘れない。
卓袱台に並べられたのは昼食も兼ねたメニューの数々だが、
枝豆とギンナンを交互に刺した可愛らしい串物とか、
ジャガ芋の千切りを、レンジで水分を取ってからカラッと揚げたもの、
大豆ミートを使った なんちゃって鷄のフリッター風に、
パスタのサラダ、春キャベツのキッシュなどなどと、
相変わらずに多彩な顔触れが居並んでおり。
そんな中、
「このそぼろ、もしかして頂き物?」
それを一番美味しいと箸をすすめては失礼かなと思いつつ、
でも…お匙でご飯に載せる手が止まらぬらしいイエスなのへ、
「あ、お肉を使ってると思ったでしょう?」
「うん。…え? 違うの?」
ブッダには調理出来ない素材だと思っての言らしかったのへ、
「実は“生麸”を使ったそぼろだよ?」
しっとり仕上がって、
まるで本当に牛肉を使ったみたいな食感になるって聞いて、
試しにやってみたんだ、と。
彼には珍しくも“してやったり”という顔になるのが、
「〜〜〜〜。//////」
イエスには可愛く見えてしょうがなく。
GWには出掛けられなかったけど、
緑や花の名所はこれからってとこも多いから。
そうだね、藤とかツツジとか、
シャクヤクやバラも これからだっけ?
観に行こうねとPCで検索してみたり、
そのままいつものゲーム合戦になり、
パズルゲームや落ちものでの対戦で 不公平なく勝ち数を揃えてから、
ああ そうそうと、ブッダが思い出したのが、
レンタル店のフェアでもらった海外ドラマのDVD。
知っているサスペンスシリーズのスピンオフとかで、
まだ観てなかったねぇと鑑賞会と運んだものの、
「〜〜〜〜。」
「……イエス、怖いなら別のを観ようか?」
近年の欧米の刑事ものや捜査ものは、
何でこんな殺され方を?という部分が、
モノによっては異様にセンセーショナルな、
つまりはエグいものも少なくはなく。
“CSI”とか“クリミナルマインド”とか、
シリアルキラーものだったりした日にゃあ、
冒頭のみならず、次の犠牲者が魔手にかかるハラハラもまた、
サービスのつもりか終盤にかけて盛り込まれているもので。
幽霊や亡者はちいとも怖くないが、
ナタを振りかざして、寝台に縛り付けた獲物を〜〜〜とか、
自由が利かないよう筋弛緩剤を投与された犠牲者へ、
「〜〜〜な、何する気なんだ、この悪魔めっ!」
並んで観ていたはずが、
日頃の密着どきのちょうど逆、
ブッダの懐ろへしがみつき、自分の肩越しにチラ見するという、
いかにも怖がってます態勢になってるイエスなものだから。
そうまで怯えて観るものでなしと言いかかったブッダだったが、
「だって、あの犯人が退治されなきゃ
怖いのが収まらないじゃないよ〜〜〜。」
懐ろへ顔を伏せてる関係から、やや見上げる格好で、
いつもは頼もしい朗らかなお顔が、
切迫しつつでも偉そうに言いつのるのが また微妙にツボであり。
“〜〜〜。///////”
ブッダとしては、スプラッタはともかく、
そちらへ吹き出しそうになるのを堪えるのが大変だったりし。(苦行?)
「……。///」
今は戦々恐々というお顔だが、
こうして、当たり前のように一緒にいられるだけで幸せだと、
普段のイエスは それは嬉しそうに微笑って言う。
そういえば、天界では
半年とか数年とかってスパンで逢えないことも珍しくはなくて。
輪廻する人々の魂を見守る立場上、
あまり頻繁に遠くまで出掛けられなんだブッダだったことへ加えて、
イエスは光の者としての使命から、
時に地上への降臨を余儀なくされもしたからで。
降りて戻ってくるだけというもののみならず、
何物かへ転変しての経過の見守りが必要とされるような場合もあったため、
天界に気配さえなくなった時期は、いつもそれは寂しかったのを覚えてる。
そうか そのころから、実はもう特別な人ではあったんだなぁなんて、
イエスの想いどころか、自身の気持ちにさえ
気づかなかった自分を、聡明が聞いて呆れると小さく自嘲。
“……恋するって難しい。////////”
好きで好きでたまらない人なのに、
他でもないその人の言動で あっけなく動揺させられる。
何でもない間柄なら、さほど堪えはしなかろう程度のことが、
好きでたまらぬ相手となると、
ガラリと重さや質を変えてしまうから困る。
親切でやさしい人、
ああでも、私以外へそうまで微笑まないで、とか。
無心になって何か読んでるお顔とか大好きなのに、
すぐにも視線に気づいてこっち向くのは無しだよぉとか。
選りにも選って、一番好きな人が、
一番の動揺や しいては苦しみをもたらす人でもあって。
なんてまあ矛盾していることだらけなことか…。
「ブッダ? 何か大人しいね。酔ったの?」
「ん〜ん。/////////」
ちょっと考え込んでただけのこと。
まだ意識ははっきりしているし、
やっと捕まった凶悪犯だったのへ、彼もまた ていと罰するように、
仰々しく構えたリモコンを振りかざし、
テレビのスイッチを切ったイエスだったのへ、
くつくつと、微笑ましいなと笑う機微も健在。
とはいえ、ほわんと心地がいいのは、
逆手に取れば“そろそろ限界だ”という
頂上サインでもあることくらいは判ってて。
それもまた冷静なればこその判断力が残っている証しだが、
「イエスは強いねぇ。」
「う〜ん、慣れがあるからねぇ。」
やれやれと やっと心持ちが落ち着いたらしく、
卓袱台の傍に戻り、自分のグラスを持ち上げたヨシュア様だったのへ。
「……。///////」
勝手に離れたなぁと、ややムッとしたものか、
ほんの一歩もあるかなしかの間合いとはいえ、
座ったままの姿勢で腰を上げずに ずりりと寄っていったのは、
行儀にうるさい彼には珍しく。
「いえす。///////」
薄曇りだが 時々薄陽も差す、まずまずのお日和だとはいえ、
この何日かのような蒸すほどの暑さということもないのでと。
窓は開けていないし、
裸足でいるとちょっぴり冷えるかも知れない。
酒精のおかげと、ほんのさっきまでブッダにしがみついていたので、
そこまでは感じてなかったイエスだが、
声を掛けつつ寄って来た伴侶様に気がつくと、
「? 寒くなったの?」
ブッダの方は、自分が離れたことで
“ふところネコ戻っておいで”と感じたのかも知れぬと思いつき、
おいで〜と あくまでおふざけ半分にその双腕を広げて見せたところが、
「……うん。///////」
おや、やっぱりほろ酔いでおわすか。
いつもだったら“もうもうもう///////”と、
一呼吸おくよにして ひとしきり照れるはずの如来様。
今日は実に素直な素振りで、
ぽそんとまずは肩口へおでこを乗っけ、
それから、嫋やかな腕を肩口と首回りへ巻きつけてくる。
「イエスからミントの匂いがする。/////」
「ブッダからはオレンジの匂いがするよ?」
おおお珍しく積極的と、微笑って受け止めておれば、
そんなイエスの視野の中、まろやかな背中へ
はさり、と
軽やかに弾け、そのままほどけて大量にすべり降りたのが、
深色の長い長い長い髪の流れであり。
“…え?//////////”
おや やっぱり、もしかせずともちょっとは酔ってるブッダみたいだと。
遅ればせながら、こちらからも腕を回すと、
ずるりとすべっていかぬよう、柔らかで温かい上体を抱きしめて。
「ブッダ? 大丈夫?」
気持ち悪くはないの?
ん〜ん、いい気持ちぃvv
かぶりを振るし、顔を浮かせて見上げてくるから、
泥酔ではないようだと、そこはイエスも安堵しておれば、
「いえす…。/////////」
そのまま 潤みの強い瑠璃色の眸で、
じいと真っ直ぐ見つめてくるものだから。
ああ狡いよぉと、これまた珍しくもイエスの方が思ってしまった
これこそ抵抗や拒絶なんて出来ますかという、
釈迦牟尼様 絶対最強の、おねだりのお顔であるらしく。
瑞々しい頬にうっすらと、
白い肌の下へ透かすよに淡い緋をにじませて。
何かへ困っているかのような むずがりの表情をし、
ふっくらした口許を薄く開け、こちらの名前を呼ばれてしまっては、
何で視線を逸らせましょうか
ダメだよなんて言えようはずもなく、
意地悪めかして はぐらかすこともないままに。
仄かな自制心だけを意識しつつ、
合わせた視線を伺い合って、徐々にまつげを伏せてゆく。
触れているも同然なほど、至近になった肌の温度が溶け合って、
多少は緊張もあるものか、短くついた吐息が甘い。
それへと誘われ、柔らかな唇へ自分の唇を重ねれば、
「……。//////////」
萎えかかる肢体を落とさぬよう、背中へ回した腕にて受け止め、
そのままぎゅうと抱きしめて。
もどかしそうな身じろぎごと宥めるように、
唇の先、ちょんちょんと小さく吸って離れれば、
「………はぁ、/////////」
そろそろ呼吸はちゃんと出来るよになってたはずが、
今日だけは止めてでもいたものか、急くような吐息を吐き出して。
“ああもう、なぁんて可愛いのーvv////////”
夜更かしや無駄遣いを叱ったり、
自業自得ですなんて、困っているのちょっとだけ放っておいたりする、
そんな風に何につけ大人のブッダなはずが。
こんなこんな初心な顔をし、真っ赤になるとこ見られるなんて。
額から べりりと茨の冠を引きはがし、
おでことおでこをくっつけて、
「可愛いよ、ブッダ。
キミとこんなこと出来るようになるなんて思わなかった。」
こそそと耳元で囁けば、
「…っっ。//////////」
赤くなると同時、体温も上がったのが判ったほどに
耳朶やうなじまで赤いところが増した彼であり。
しっとりした髪がその身に添うて長々と垂れている分、
まろやかなしどけなさも増していて。
「〜〜〜。///////」
ある意味ふしだらなことよと、恥ずかしいこと指摘され。
さぞや困惑しておいでなものか、
大きな双眸落ち着きなく泳がせていた如来様だったが、
「…い、いえすの、」
「んん?」
一体 何を言い返すつもりかなと、
こちらは余裕で 微笑みつつ待ち受けておれば、
「えっち。////////」
含羞みながら、視線をやや逸らしつつのこの一言は、
動転しつつも懸命に想いを巡らし、
絞り出すように繰り出したそれだったらしいが。
“ううう〜〜。///////”
幼稚な文言に、恥ずかしいと真っ赤になってる場合じゃあない。
言われた側へは そんなもんじゃあないほどに、
途轍もない威力があったようで。
「………っ!!!/////////」
現にイエスも、おおうと口だけ開いて、声は無くすほどであり。
好きな相手からの一言だもの、巨大萌えを打ち込まれたようなもの。
これはもしかして、好きな人から恥ずかしいこと言われた子の、
含羞みつつのせいぜいの罵倒の“バカ ///////”と同義のアレでしょうか。
信じられないこの変態くらい言われかねない破廉恥な仕打ちを、
けれど、好きなあなただから許すという、
半分怒ったくらいの羞恥心を、でもでも自分でぎゅうと押し沈めつつ、
小さな小さな抵抗として、か弱い爪で えいとつねって来たような。
あの、可愛らしいのと同じに違いない、
それは小声だった“えっち”という一言へ、
「あ…。////////」
今度はこっちが居ても立ってもいられないほど、
あわわと真っ赤になって含羞んでおれば、
「博愛主義の人を好きになるのって、ホント大変なんだから。////////」
もうヤケだと開き直ったか、
切々と訴え始めるブッダであり。
「大変だけど、でも、好きなんだもん。
そうと思う気持ちはどうしたって止められないし。/////」
驚いているものか、ただただこちらを見つめるばかりのイエスなのへ。
もはや返事も要らぬか、ブッダは言葉を続け、
「それでなくとも、私、こういうことの慣れなんてなくて。
でも、こうしてると“もっともっと”って思うの止められないし。」
一緒にいるのに不安だったのは、
私が しがみつき方や甘え方を知らないからだとイエスは言ってた。
ホント、そうだなぁってつくづく思う。
「だから、私、
恋という想いを煩悩だって言い張ってたんだ。
先見の妙? 先見の明だっけ?
私って凄くない?」
ここでちらりんと、挑むような眸をするものだから、
「…ブッダ、悪酔いするから休もうか。」
ムキになるのは良くないと、それを思った言いようだのに、
はぐらかしかかったと思われたらしく、
「ねえ、私たちが もっとって思うのはやっぱり罪なのかなぁ。///////」
打って変わって目許をたわめ、
すがるような声を出されては。
そんな寂しそうな顔も声も関係なくのこと、
常に思ってたこと、イエスの側でも隠せなくなる。
っは と短く息をつき、それで思い切ってのそのまま、
「…………そんなことない。/////////」
応じたイエスの腕が、愛しい人の肢体をぎゅうと抱き寄せており。
戸惑いがそのままこごって熱を帯びてしまったように、
いつもよりじんわりと熱い肌を意識して、
“…っ。////////”
雄々しくもない胸の奥、何かが ずきりと捩れて撥ねる。
「…ぶっだ。////////」
再び重なった唇は、だが、触れるだけのバードキスでは物足りないか、
互いのそこへすがりつくよに、もっともっとを求めてやまぬ。
「…ん、んぅ。/////////」
離れかかっては吐息や微熱を割り込ませ。
舌先で混ぜ合わせて吐き出す それ越しの熱が、
不意にざらりとした熱いものへ触れ。
あっと弾かれるように一瞬離れたものの、
相手が離れるのは いやなのか、
追いかけるよに捕まえ合うと、なお深々と唇が重なる。
一瞬触れた熱いもの、も一度 触れれば舌だと判り、
恐る恐るに先だけ触れて、でもそれ以上はまだ無理と、
唇同士を蹂躙し合って。
「あ…う、ぅん…。///////」
柔らかすぎてもどかしい、でもそれは甘くて離れがたい口許から、
それもいつもの常で、イエスの唇が耳元へと逸れてゆき。
「…っ。」
ひくりと震えて上がったおとがいの縁を経て、
露になった白い喉、ゆっくりと唇の先で撫でてゆけば、
「…ん、あ…ぅ…。////////」
ただでさえ敏感なところ、
微妙に堅い髭の先が触れるのが さぞやくすぐったかろうに。
くっと息を詰め、我慢してくれるのがまた愛おしい。
かすかな震えも伝わってくるのを柔らかな肌越しに受け止めて、
するするとすべり降りた先で、だが、ふと口許を離したイエスであり。
“………え?//////”
いやに短かったことを不審に思い、
どしたの?と間近い相手を伺えば、
「だって、跡が残るでしょ?/////」
こんなすべすべした肌だもの、
うっかりしたこと仕掛かれば、またもやあんなことになる。
それを厭うたイエスなのが、嬉しいけれどもどかしく。
ブッダの側が ううと言葉に詰まっていたのも僅かな間のこと。
「…ここなら見えない。」
その白い手がシャツの襟首を引き下げる。
尚のこと白く、
しかも常に秘された処という禁忌がなまめかしく滲む肌が覗き、
「…っ、//////////」
そればかりはダメだってと、言うのは容易いが、
それって…そうまで思い切った彼を突き放すことになりはせぬか。
もっと欲しいと思うのは罪なのか、それへと応じたくせに、
此処で尻込みするのは、それこそ生半可ではないか。
そんな二つの想いが一挙に重なり、
「 …ぶっだ。」
やや逃げ腰になりかけたのも一瞬の幻、
切なげに見上げてくる愛しい人を抱きすくめ、
その胸元へと顔を埋めるイエスであり。
「 …っ。////////」
ブッダのまろやかな肩がひくりと震え、
だが、嫋やかな腕が懸命に愛しい人を抱きしめて。
かすかな痛さへ眉が寄ったが、口許には甘い笑み。
ああこのまま、時が止まってしまえば良いなぁなんて
慈愛の存在にはあるまじきこと、
ついつい思ってしまった二人だった。
お題 7 『流動的恋愛論』 後編
BACK/NEXT →
*………………いや、あのその、/////////
じゃ、そういうことで。(こら)
めーるふぉーむvv
掲示板&拍手レス

|